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宇都宮って餃子の街だけど、水道水はどうなんだろう? まずいって聞いたこともあって…。引っ越し先の候補なんだけど、そのまま飲めるのか気になってるんだ。
おもしろいところに気づいたね。じつは宇都宮市って、その「餃子」と「水道水」の関係を、自分たちで実験して確かめてる街なんだ。この記事は宇都宮市上下水道局が公開してるPDFを直接開いて、数字も原文もそのまま整理したよ。
先に結論をお伝えします。
宇都宮市の水道水は、飲める水として各家庭に届けられています。
硬度は43程度の軟水で、国の「おいしい水の要件」7項目を、令和4年度の実測値がすべて満たしています。
そして宇都宮市は、その「おいしさ」を言葉で主張するだけでは終わらせませんでした。
硬度の違う4種類の水で餃子の皮を作り分け、機械で硬さと伸びを測るという実験を、上下水道局が自分でやっています。
- 宇都宮市の水道水の硬度(43程度の軟水)と、おいしい水の要件7項目の実測値
- 市が餃子の皮でやった実験の中身(使った水・作り方・測った道具・結果)
- 「まずい」と言われる理由の正体(宇都宮市の公式回答つき)
- 水源の約8割が鬼怒川で、大都市のような高度浄水処理を入れていない理由
- 気になる人が0円でできることと、お金をかける場合の選択肢
それでは、くわしく見ていきましょう。
目次
- 1.結論:宇都宮市の水道水は飲める。しかも市は「おいしさ」を実験で確かめている
- 1.1.宇都宮市の水道水の硬度は43程度の軟水
- 1.2.おいしい水の要件7項目を、令和4年度の実測値がすべてクリアしている
- 2.宇都宮市は、水道水で餃子の皮を作って実験した
- 2.1.硬度の違う4種類の水で、生皮・茹で皮・焼き皮を作り分けた
- 2.2.テクスチャーアナライザーで「硬さ」と「伸び」を測った結果
- 2.3.令和7年には大学・県・餃子会と組んだ産学官連携に広がった
- 3.「まずい」と言われる理由を、宇都宮市の公式回答で答え合わせする
- 3.1.カルキ臭・白濁・赤水は、水源ではなく配管と消毒の話
- 3.2.夏に「ぬるい」と感じるのは水温が上がるから(要件は20℃以下・実測17.0℃)
- 3.3.マンションなら貯水槽を疑う。管理は建物の所有者の責任
- 4.水源の約8割は鬼怒川。「高度浄水処理を入れなくていい」と市は言う
- 4.1.鬼怒川と、中禅寺湖から流れる大谷川。地下水は白沢浄水場など
- 4.2.大都市のような常時稼働の高度浄水処理施設はない
- 4.3.昭和60年、宇都宮は「水道水のおいしい都市」全国32市に選ばれた(関東は4市)
- 5.正直に言います:宇都宮市が公式に書いていないこと
- 5.1.①今里浄水場・謡辻浄水場の詳細
- 5.2.②地区ごと・浄水場ごとの硬度の一覧
- 5.3.③無料給水スポットの拠点ごとの設置年月日
- 5.4.④「県内初のモンドセレクション」という表現の裏づけ
- 5.5.⑤宅内配管の老朽化の実態
- 6.それでも気になる人の選択肢
- 6.1.まず0円でできること(給水スポット「宮の泉」・冷やす)
- 6.2.浄水器とウォーターサーバーはどう違うのか
- 6.3.一人暮らしなら、そもそも必要かどうかから考える
- 7.まとめ:餃子の皮で確かめた街の水は、そのまま飲める
結論:宇都宮市の水道水は飲める。しかも市は「おいしさ」を実験で確かめている
結論から言うと、宇都宮市の水道水は、ふつうに飲む水として届けられています。
その根拠は、宇都宮市上下水道局が公開している資料の中に、数字でそろっています。
宇都宮市には『おいしい水うつのみや研究チーム』という組織があり、令和5年8月に調査報告書を公開しました。
自分たちの水がどういう成分でできていて、国の基準に対してどの位置にいるのかが、実測値でそのまま書かれている資料です。
この記事は、その報告書と市の公式ページ、そして後半の主役になる実験PDFを読みながら書いています。
宇都宮市の水道水の硬度は43程度の軟水
まず、いちばん検索されている「硬度」から答えます。
宇都宮市の水道水は、硬度43mg/L程度の軟水です。
硬度とは、水にふくまれるカルシウムとマグネシウムの量を表した数字のことです。
この数字が低いほど「軟水」で、口当たりがまろやかになると言われています。
日本の水道水はもともと軟水寄りですが、その中でも43はやわらかい部類に入ります。
この43mg/Lは、『おいしい水うつのみや研究チーム』調査報告書に載っている令和4年度の平均値です。
*宇都宮市上下水道局『おいしい水うつのみや研究チーム』調査報告書(令和5年8月)から抜粋(2026年8月1日確認)
ここは正直に補足しておきます。
43という数字は「2026年に測ったらこうだった」という値ではなく、令和4年度に測ったものを1年分ならした平均です。
ですのでこの記事でも、「今この瞬間の宇都宮の水が硬度43」という書き方はしません。
あくまで「宇都宮市が公開している直近の実測平均」として読んでください。
そのうえで数字の意味をお伝えすると、硬度43はお茶やコーヒー、和食のだしと相性がよいと言われるレンジです。
この「軟水である」という特徴が、後半の餃子の実験にそのままつながっていきます。
おいしい水の要件7項目を、令和4年度の実測値がすべてクリアしている
宇都宮市が「おいしい」と言えるのは、感覚の話ではなく、比べる物差しがあるからです。
その物差しが「おいしい水の要件」7項目です。
これは厚生省(現在の厚生労働省)が昭和59年6月に発足させた「おいしい水研究会」がまとめたもので、宇都宮市が自分で作った基準ではありません。
全国共通の物差しに、宇都宮市の実測値を当てはめた結果がこちらです。
項目 | おいしい水の要件 | 宇都宮市の実測値(令和4年度平均) |
|---|---|---|
蒸発残留物 | 30〜200 mg/L | 95 mg/L |
硬度 | 10〜100 mg/L | 43 mg/L |
遊離炭酸 | 3〜30 mg/L | 4.7 mg/L |
過マンガン酸カリウム消費量 | 3 mg/L以下 | 0.8 mg/L |
臭気強度 | 3以下 | 0 |
残留塩素 | 0.4 mg/L以下 | 0.35 mg/L |
水温 | 20℃以下 | 17.0℃ |
*宇都宮市上下水道局『おいしい水うつのみや研究チーム』調査報告書(令和5年8月)から抜粋(2026年8月1日確認)
7項目すべてが、要件の中に収まっています。
数字が並ぶと読み飛ばしたくなるので、味に効く4つだけ暮らしの言葉に置き換えておきます。
- 蒸発残留物95mg/L…水を蒸発させたときに残るミネラル分。少なすぎると味気なく、多すぎると重たくなる。宇都宮はちょうど真ん中あたり
- 硬度43mg/L…軟水。お茶・コーヒー・だしと相性がよいレンジ
- 臭気強度0…においの強さ。要件は3以下で、宇都宮の実測平均は0
- 残留塩素0.35mg/L…消毒用の塩素の残り。多いとカルキ臭が出やすくなる
とくに目を引くのが、臭気強度0という値です。
これも令和4年度の平均値なので「1年じゅう常にゼロ」という意味ではありませんが、平均でここまで下がっているのは、においの少ない水だということです。
もう1つ、水源による違いも報告書には書かれています。
地下水を水源とする白沢水系の水道水について、市はこう説明しています。
「蒸発残留物が適度に含まれ硬度が低く,遊離炭酸が多く含まれていることなどから,より『おいしい水』であるといえます」。
*宇都宮市上下水道局『おいしい水うつのみや研究チーム』調査報告書(令和5年8月)から抜粋(2026年8月1日確認)
白沢水系の実測値は、蒸発残留物107mg/L・硬度53mg/L・遊離炭酸8.0mg/L・残留塩素0.30mg/Lで、市が「より『おいしい水』」と評価しているのはこの4項目についてです。
つまり同じ宇都宮市内でも、住んでいる場所によって口に入る水の成分は少しずつ違う、ということになります。

宇都宮市は、水道水で餃子の皮を作って実験した
ここからが、この記事の主役です。
宇都宮市上下水道局は、令和6年3月に「水道水でぎょうざの味が変わる?!」という資料を公開しました。
タイトルだけ見ると広報用の読み物に見えますが、中身はしっかりした実験のレポートです。
きっかけは、市民から寄せられた声でした。
「『宇都宮の水道水はおいしいけれどどんな特徴があるのか?』,『宇都宮の水を使った餃子の皮は特においしいと感じるがなぜか?』という声をいただくことがあります。そこで,宇都宮の水道水と小麦粉の関係について実験をしてみました」。
*宇都宮市上下水道局「水道水でぎょうざの味が変わる?!」(令和6年3月)から抜粋(2026年8月1日確認)
市民の素朴な疑問に、水道局が実験で答えにいった、ということです。
このブログでいろんな街の水道水を調べてきましたが、こういう動き方をしている自治体は、そう多くありません。
硬度の違う4種類の水で、生皮・茹で皮・焼き皮を作り分けた
実験の設計は、とてもシンプルです。
硬度だけが違う4種類の水を用意して、それ以外の条件をそろえて餃子の皮を作る、というものでした。
使われた水は、この4つです。
- 超軟水…硬度0mg/L
- 高軟水…硬度10mg/L程度
- 軟水=「泉水」…硬度60mg/L程度
- 硬水…硬度1000mg/L以上
ポイントになるのが、3番目の「泉水」です。
PDFには、この泉水が宇都宮市の水道水をボトリングした商品だと明記されています。
つまりこの実験は、「宇都宮の水道水」を4つのうちの1つとして、他の硬度の水と正面から比べたことになります。
*宇都宮市上下水道局「水道水でぎょうざの味が変わる?!」(令和6年3月)から抜粋(2026年8月1日確認)
なお、この60mg/L程度という数字は実験PDFに書かれている値で、前半で紹介した市全体の平均43mg/Lとは集計の元が違います。
どちらかが間違いという話ではなく、「泉水は白沢浄水場の水道水をボトル詰めしたもの」「43mg/Lは市全体の令和4年度平均」という、別々の数字だと理解してください。
そして、皮の作り方がまた細かいのです。
生地の材料は、強力粉80g・薄力粉60g・水80mL。
これをホームベーカリーで5分練り、密封して冷蔵庫で30分寝かせます。
寝かせた生地を16gずつ取り、直径8.5cm・厚さ2mmの円形にのばして皮にします。
その皮を、3種類の状態にして測定にかけました。
皮の種類 | 作り方 |
|---|---|
生皮 | のばしたまま(成型のしやすさ・色を見る用) |
茹で皮 | 沸騰した超軟水で2分ゆでる |
焼き皮 | 230℃のホットプレートで片面30秒 → 超軟水70mLを加えて蓋をし、3分30秒の蒸し焼き |
*宇都宮市上下水道局「水道水でぎょうざの味が変わる?!」(令和6年3月)から抜粋(2026年8月1日確認)
ここで、地味だけれど大事なところに気づきます。
茹でるときの水も、蒸し焼きに使う水も、すべて超軟水でそろえられているのです。
つまり変えたのは「生地に混ぜる水の硬度」だけで、あとの工程はすべて同じ条件にしてあります。
ゆで水まで硬度を変えてしまうと、どこで差がついたのか分からなくなるからです。
広報の読み物ではなく実験として組み立てられている、というのはこういうところに出ます。
えっ、水道局の人が餃子の皮を作ってるの…!? しかもホットプレートの温度まで決まってるとか、本気度がすごい。
本気だよね。しかも茹でる水と蒸し焼きの水は全部そろえてあるんだ。変えたのは生地に混ぜる水の硬度だけ。こうしないと「何が効いたのか」が分からなくなるからね。
テクスチャーアナライザーで「硬さ」と「伸び」を測った結果
できあがった皮は、人の感想ではなく機械で測られました。
使われた道具は2つです。
- テクスチャーアナライザー…皮に専用の部品を突き刺して、「硬さ」と「伸び」を数値で測る装置
- 分光測色計…生皮の色をL*a*b*という数値に置き換えて記録する装置
テクスチャーアナライザーは、食品の食感を数字にするための装置です。
「噛み切るのにどれくらいの力が要るか」が硬さ、「切れるまでどれだけ伸びるか」が伸びにあたります。
もっちり感や噛みやすさといった、言葉にしづらい感覚を数字に翻訳しているわけです。
そして出てきた結論が、この3つです。
「軟水(水道水)で作った餃子の生地は,最も成型しやすい」。
「軟水(水道水)で作った餃子の茹で皮は,噛みやすく食べやすい」。
「軟水(水道水)で作った餃子の焼き皮は,もっちりとした食感である」。
*宇都宮市上下水道局「水道水でぎょうざの味が変わる?!」(令和6年3月)から抜粋(2026年8月1日確認)
生地・茹で皮・焼き皮の3つとも、軟水=宇都宮の水道水で作ったものが良い結果になった、と結論づけられています。
念のため書いておくと、この記事の筆者が餃子を焼いて確かめたわけではありません。
あくまで、宇都宮市上下水道局が公開しているPDFに書かれている結論です。
そのうえで、この結果はけっこう腑に落ちます。
市民から寄せられていた声は、「宇都宮の水を使った餃子の皮は特においしいと感じるがなぜか?」というものでした。
感覚として先にあった「なんとなくおいしい」に、あとから数字で理由がついた、という順番です。
令和7年には大学・県・餃子会と組んだ産学官連携に広がった
この実験には続きがあります。
令和7年3月、宇都宮市上下水道局は同じテーマの研究を、外部と組んだ体制に広げました。
組んだ相手は、宇都宮大学農学部・栃木県産業技術センター・協同組合宇都宮餃子会・株式会社みんみんです。
大学(学)・県の研究機関(官)・餃子の業界団体と店(産)が、水道局と一緒に並んだ形になります。
使う水も、硬度0・10・55・110・1000mg/L以上の5種類に増やして、再実験が行われました。
*宇都宮市上下水道局「上下水道局×宇都宮大学×宇都宮餃子会 コラボ研究レポート」から抜粋(2026年8月1日確認)
正直に書いておくと、この令和7年の再実験について、結論部分の詳しい記載までは今回確認できていません。
ですのでこの記事では、「4種類から5種類に広げて、産学官の体制で再実験が行われた」というところまでにとどめます。
それでも、意味は十分あります。
市民の声から始まった水道局の実験が、1年後には大学と県の研究機関と業界団体を巻き込むところまで育った、ということだからです。

「まずい」と言われる理由を、宇都宮市の公式回答で答え合わせする
ここまで読んで、「じゃあ、なんで『まずい』って検索されるの?」と思った方もいるはずです。
その答えも、宇都宮市が先回りして書いています。
市の「水質がおかしいと感じたら」というページは、カルキ臭・白濁・赤水・鉄さびの濁り・水温の上昇などを、症状ごとに説明する構成になっています。
ネットの噂ではなく、公式回答で答え合わせをしていきましょう。
カルキ臭・白濁・赤水は、水源ではなく配管と消毒の話
まず、いちばん多いカルキ臭からです。
宇都宮市はこう書いています。
「カルキ(塩素)のにおいが強く感じることがありますが,そのにおいは,細菌を殺す消毒用の塩素のにおいです。これは異常ではなく,水が安全であることの証明ですので安心してお飲みください」。
*宇都宮市上下水道局「水質がおかしいと感じたら」から抜粋(2026年8月1日確認)
カルキ臭は「異常ではなく、水が安全であることの証明」だと、市ははっきり書いています。
塩素は、入ってしまった不純物ではありません。
蛇口に届くまで水を衛生的に保つために、法律にもとづいて入れられているものです。
おいしい水の要件で残留塩素が「0.4mg/L以下」となっているのも、ゼロにするという意味ではなく、多すぎないようにするという意味です。
次に、コップに注いだ水が白く濁るケース。
これは細かい空気の泡が水に溶け込んだもので、しばらく置くと下から透明になっていきます。
そして赤水や、鉄さびによる濁りです。
これは水源の問題ではなく、建物の中の給水管が原因になることが多い症状で、宇都宮市はこうも書いています。
「なお,鉄さびが混入した水道水を万一飲用した場合でも,健康上支障はありません」。
*宇都宮市上下水道局「水質がおかしいと感じたら」から抜粋(2026年8月1日確認)
ただし、例外もはっきり書かれています。
灯油やシンナーのようなにおいがする場合は別で、給水管の布設替え(利用者負担)が必要になると案内されています。
においの種類によって、対応がまったく違うということです。
夏に「ぬるい」と感じるのは水温が上がるから(要件は20℃以下・実測17.0℃)
「夏の水道水はまずい」という感想は、けっこう多くの街で聞かれます。
これも宇都宮市のページで説明されている症状の1つで、夏場は水温が上がることが原因です。
*宇都宮市上下水道局「水質がおかしいと感じたら」から抜粋(2026年8月1日確認)
思い出してほしいのが、おいしい水の要件です。
水温の要件は「20℃以下」で、宇都宮市の実測平均は17.0℃でした。
これは年間の平均値なので、真夏の蛇口の水がいつも17℃という意味ではありません。
そして水はぬるいと「おいしくない」と感じやすいと言われています。
成分は変わっていないのに、季節で評価が変わるのはそのためです。
だからこの悩みの解決策は、じつはとても安上がりです。
ボトルに入れて冷蔵庫で冷やしておく、それだけで印象が変わることがあります。
マンションなら貯水槽を疑う。管理は建物の所有者の責任
ここが、この章でいちばん見落とされやすいところです。
マンションやアパートでは、水道管から直接部屋に水が届くとは限りません。
いったん建物の貯水槽(受水槽)にためてから、各部屋に配る方式の建物があります。
そしてこの方式のとき、責任の分かれ目が生まれます。
貯水槽に水が入ったあとの管理は、水道局ではなく建物の設置者・管理者の責任になります。
*宇都宮市上下水道局「貯水槽水道」から抜粋(2026年8月1日確認)
つまり、同じ宇都宮市内の同じ地域でも、住んでいる建物によって蛇口から出る水の状態は変わりうるということです。
市がどれだけ良い水を作って送っても、建物の中でどう扱われるかまでは水道局の管轄外だからです。
もし「宇都宮に引っ越したら水がおいしくない気がする」と感じたら、疑う順番はこうなります。
- 季節(夏で水温が上がっていないか)
- 建物の給水管(築年数の古い建物か)
- 貯水槽の管理状態(管理会社に清掃の記録を聞けます)
水源そのものを疑う前に、この3つを見たほうが答えに近づきます。
えっ、同じ市内でも建物によって違うの…? それは盲点だったかも。
そうなんだ。貯水槽のある建物だと、そこから先は建物側の管理になるからね。気になるなら管理会社に「貯水槽の清掃っていつやってますか」って聞いてみるといいよ。
水源の約8割は鬼怒川。「高度浄水処理を入れなくていい」と市は言う
ここからは、その水がどこから来ているのかを見ていきます。
宇都宮市の水源構成について、市はこう説明しています。
「宇都宮市の水道水源は,約8割が河川水,2割が地下水です」。
*宇都宮市上下水道局『おいしい水うつのみや研究チーム』調査報告書(令和5年8月)から抜粋(2026年8月1日確認)
川の水がメインで、地下水がそこに加わる形です。
そして、この「2割の地下水」が、この街の水のキャラクターを決めています。
鬼怒川と、中禅寺湖から流れる大谷川。地下水は白沢浄水場など
報告書の説明を、そのまま引用します。
「河川水を水源としている浄水場は,上質で豊富な水量を有する鬼怒川を水源とする松田新田浄水場と板戸配水場や,日光連山に育まれた中禅寺湖からそそぐ大谷川を水源とする今市浄水場です。また,地下水を水源としているのは,白沢浄水場,今里浄水場,謡辻浄水場です」。
*宇都宮市上下水道局『おいしい水うつのみや研究チーム』調査報告書(令和5年8月)から抜粋(2026年8月1日確認)
施設ごとに整理すると、こうなります。
施設 | 水源 | 施設能力(1日あたり) | 処理方式 |
|---|---|---|---|
松田新田浄水場 | 鬼怒川 | 124,000 ㎥(県内最大) | 急速ろ過+活性炭注入設備(かび臭発生時のみ) |
板戸配水場 | 鬼怒川 | 28,000 ㎥ | 急速ろ過(栃木県企業局からの受水) |
今市浄水場 | 大谷川(水源は中禅寺湖) | 14,000 ㎥ | 緩速ろ過 |
白沢浄水場 | 地下水(10か所の井戸) | 44,000 ㎥ | 消毒のみ(紫外線処理装置) |
今里浄水場 | 地下水 | 988 ㎥ | 消毒のみ |
謡辻浄水場 | 地下水 | 44 ㎥ | 膜ろ過 |
*宇都宮市上下水道局「松田新田浄水場」/同「白沢浄水場」/『おいしい水うつのみや研究チーム』調査報告書から抜粋(2026年8月1日確認)
この表で目立つのが、白沢浄水場の「消毒のみ」という処理方式です。
地下水は地層を通ってくる間に自然にろ過されているため、川の水のように濁りを取る工程が要りません。
1日44,000㎥という規模の地下水が混ざっていることが、宇都宮市の水道水の性格をつくっています。
もう1つ、歴史の話も添えておきます。
今市浄水場は、大正5年3月に通水した、国内31番目の水道です。
つまり宇都宮の水道は、ここから始まりました。
昭和60年には厚生省企画の「近代水道100選」に選ばれ、旧管理事務所などは平成18年に国の登録有形文化財になっています。
*宇都宮市上下水道局「今市浄水場」から抜粋(2026年8月1日確認)
100年以上前の施設が、いまも緩速ろ過で水を作りつづけているというわけです。
大都市のような常時稼働の高度浄水処理施設はない
ここが、宇都宮市のPRのいちばん面白いところです。
市は、報告書の中でこう書いています。
「良質な水源に恵まれた『うつのみやの水道水』は,大都市のように,通常の浄水処理では十分に対応できない,臭いや汚れなどを活性炭処理やオゾン処理などにより除去する高度浄水処理を導入しなくても,水源の良さを生かした浄水処理で『おいしい水道水』をつくることができます」。
*宇都宮市上下水道局『おいしい水うつのみや研究チーム』調査報告書(令和5年8月)から抜粋(2026年8月1日確認)
ふつう、設備が少ないことは弱点として扱われます。
ところが宇都宮市は、それを「水源が良いから要らない」という誇りとして書いているのです。
ここは正確に補足しておきます。
松田新田浄水場と板戸配水場には、活性炭注入設備があります。
ただしこれは、かび臭が発生したときに稼働する設備です。
大都市が導入している「オゾン処理と活性炭の層に、水を常に通しつづける」という常時稼働型の大規模な高度浄水処理施設が、宇都宮市にはない、という意味になります。
「まったく活性炭を使っていない」わけではない、というのは押さえておいてください。
この構えは、じつは京都市とよく似ています。
京都市も、オゾンと粒状活性炭を常に通す方式ではなく、においが出たときに粉末活性炭を注ぐ形をとっています。
ただ、両者は置かれている事情がかなり違います。
京都市の水源は約99%が琵琶湖で、夏になると植物性プランクトン由来のかび臭という課題と向き合うことになります。
いっぽう宇都宮市の水源は、鬼怒川と大谷川、そして地下水です。
同じ「常時型の高度浄水処理を持たない街」でも、水源の事情が違えば、抱える課題も違うということです。
どちらが上という話ではありません。
京都市は起きたことを隠さず記録に残した街で、宇都宮市は「おいしい」を自分で実験して確かめにいった街。
並べて読むと、水道水という同じテーマでも、街ごとに性格がまるで違うことが見えてきます。
▶ 京都市の水道水は飲める?まずい?99%が琵琶湖の水の正体を公式で検証
昭和60年、宇都宮は「水道水のおいしい都市」全国32市に選ばれた(関東は4市)
宇都宮市の「おいしい」には、もう1つ古い裏づけがあります。
報告書には、こう書かれています。
「昭和60年4月には,『おいしい水研究会』による人口10万人以上の都市を対象とした『水道水のおいしい都市』調査において,宇都宮市の水道水が選ばれました」。
「『おいしい水の要件』口当たりの良さを決める成分やバランス,臭気,残留塩素などの厳しい数値をクリアした都市は,全国でわずか32都市だけでした。なお,関東地方では,4つの市が選ばれています」。
*宇都宮市上下水道局『おいしい水うつのみや研究チーム』調査報告書(令和5年8月)から抜粋(2026年8月1日確認)
関東地方で選ばれたのは、宇都宮市を含めて4市だけでした。
ただし、ここは慎重に受け取ってください。
これは昭和60年、いまから40年以上前の調査です。
「選ばれなかった街の水が今まずい」という意味にはなりません。
浄水技術も水質基準も、この40年で大きく変わっているからです。
この事実の価値は、他の街と比べるところにはありません。
宇都宮市が「うちの水はおいしい」と言い続けている根っこが40年以上前の国の調査にあり、それを令和の実測値でも確かめ、さらに餃子の皮で実験までしている——その一貫性のほうです。
正直に言います:宇都宮市が公式に書いていないこと
ここまで公式の数字を並べてきましたが、調べても分からなかったこともあります。
このブログは「わからないことは、わからないと書く」方針なので、正直に並べておきます。
①今里浄水場・謡辻浄水場の詳細
この2つの浄水場については、施設能力(988㎥/日・44㎥/日)以外の情報が、公式にほとんど見当たりませんでした。
いつできた施設なのか、どういう経緯で作られたのかは、今回確認できていません。
②地区ごと・浄水場ごとの硬度の一覧
「自分の住んでいる地区の硬度はいくつか」が分かる一覧は、公式に見つけられませんでした。
確認できたのは、市全体の令和4年度平均(43mg/L)と、白沢水系の値(53mg/L)までです。
③無料給水スポットの拠点ごとの設置年月日
後述する「宮の泉」は市内5か所にありますが、それぞれがいつ設置されたのかは、公式ページに明記がありません。
ネット上には設置年を書いている情報もありますが、一次資料で確認できなかったため、この記事では書きません。
④「県内初のモンドセレクション」という表現の裏づけ
「うつのみや泉水」について「県内初の受賞」と紹介している情報がありますが、宇都宮市の公式ページにその記載は見つかりませんでした。
ですのでこの記事では、公式に書かれている「令和5年4月・令和7年4月にモンドセレクション金賞を受賞」という事実だけを書いています。
⑤宅内配管の老朽化の実態
「古い建物の配管が原因」という説明は市の公式ページにありますが、市全体でどれくらいの配管が古いのか、更新がどこまで進んでいるのかというデータは、今回確認できませんでした。
それでも気になる人の選択肢
ここまで読んで、「安全なのは分かった。でも、もう少しなんとかしたい」という人もいると思います。
そういう人のために、お金がかからない順に選択肢を並べます。
まず0円でできること(給水スポット「宮の泉」・冷やす)
いちばん先に試してほしいのが、お金のかからない2つです。
1つ目は、冷やすことです。
さきほど書いたとおり、「夏の水道水がまずい」の正体はかなりの部分が水温です。
ボトルに入れて冷蔵庫で冷やしておくだけで、印象がはっきり変わることがあります。
ただし、時間がたつと消毒の効果は弱まっていくと言われているので、その日のうちに飲みきるのが安心です。
2つ目が、宇都宮ならではの方法です。
市内には、マイボトルに無料で水道水を補充できる給水スポット「宮の泉」が5か所あります。
- ライトキューブ宇都宮
- オリオンスクエア
- うつのみや表参道スクエア
- 大谷コネクト
- アークタウン宇都宮
*宇都宮市上下水道局「宮の泉(給水スポット)を設置しました!」から抜粋(2026年8月1日確認)
この「宮の泉」という愛称は、総投票1,214票のうち725票を集めて、市民投票で決まりました。
*宇都宮市上下水道局「給水スポットの愛称が『宮の泉』に決定しました!」から抜粋(2026年8月1日確認)
外出先でペットボトルを買う代わりにマイボトルを補充すれば、それだけで水代は0円になります。
もう1つ、その水道水がボトルになった商品もあります。
「うつのみや泉水」は、地下水を水源とする白沢浄水場の水道水をボトル詰めしたもので、平成12年度から製造され、令和5年4月と令和7年4月にモンドセレクション金賞を受賞しました。
*宇都宮市上下水道局「うつのみや泉水」から抜粋(2026年8月1日確認)
そして思い出してほしいのですが、餃子の皮の実験で「軟水」として使われたのが、この泉水でした。
実験で良い結果が出た水は、宇都宮の家庭の蛇口から出ている水と同じ系統の水だということです。
浄水器とウォーターサーバーはどう違うのか
0円の方法で足りないときに出てくるのが、浄水器とウォーターサーバーです。
ざっくり整理すると、こうなります。
- 浄水ポット・蛇口用浄水器…本体代とカートリッジ代がかかります。においのもとをこし取るシンプルな道具
- 浄水型ウォーターサーバー…月額定額。水道水を注ぐとフィルターを通し、冷水・温水がすぐ出る
- 宅配型(ボトル型)ウォーターサーバー…月額+水代。天然水などのボトルが自宅に届く
宇都宮市の水道水は硬度43程度の軟水で、臭気強度の実測平均も0でした。
ですので「水質そのものに毎日困っている」というより、「冷たい水と熱いお湯がすぐ出るとラク」という理由で検討する人のほうが多いはずです。
その場合、いきなり月額のかかるサーバーに飛びつく前に、冷蔵庫のボトルで足りないかを先に試すほうが失敗しにくいです。
そのうえで、「毎日お湯を沸かすのが面倒」「カートリッジ交換すら忘れる」という人には、浄水型ウォーターサーバーが選択肢に入ります。
ただし浄水型にも、正直に知っておくべき欠点があります。
そこを含めて実費で比較した記事がこちらです。
▶ 浄水型ウォーターサーバーのデメリット全部見せ|後悔しない選び方
一人暮らしなら、そもそも必要かどうかから考える
最後に、一人暮らしの人へ。
一人暮らしの水の使用量で計算すると、ウォーターサーバーは「必ずしも得ではない」ケースがけっこうあります。
宇都宮市の水道水は硬度43程度の軟水で、市が実験までして特徴を確かめている水です。
だとすれば、まずは「そもそも自分に必要か」から考えるほうが、お財布にはやさしいはずです。
必要な人・いらない人を、実費ベースで言い切った記事がこちらです。
▶ 一人暮らしにウォーターサーバーはいらない?必要・不要を実費で徹底比較
まとめ:餃子の皮で確かめた街の水は、そのまま飲める
最後に、この記事の答えを整理します。
宇都宮市の水道水は飲めます。
硬度は43mg/L程度の軟水で、これは令和4年度の実測平均です。
国の「おいしい水の要件」7項目に対して、宇都宮市の実測値はすべて要件の中に収まっていました。
臭気強度の平均は0、残留塩素は0.35mg/L、水温は17.0℃。
そのうえでこの街がおもしろいのは、そこで止まらなかったことです。
「宇都宮の水を使った餃子の皮は特においしいと感じるがなぜか?」という市民の声を受けて、上下水道局が硬度の違う4種類の水で餃子の皮を作り分けました。
生皮・茹で皮・焼き皮の3種類にして、テクスチャーアナライザーで硬さと伸びを測る。
結果、軟水=宇都宮の水道水で作った生地は最も成型しやすく、茹で皮は噛みやすく、焼き皮はもっちりした食感だと結論づけられました。
そして令和7年には、大学・県の研究機関・餃子会と組んだ産学官連携に広がっています。
いっぽうで「まずい」と感じる原因は、水源ではなく別のところにありました。
カルキ臭は消毒が効いている証拠、夏のぬるさは水温、赤水や濁りは建物の配管、そしてマンションなら貯水槽の管理状態です。
読者のタイプ別に、はっきり言い切ります。
- とくに気にならない人…そのままでOK。硬度43程度の軟水で、お茶やコーヒー、だしを取る料理にも普通に使えます
- 夏だけぬるくて気になる人…冷蔵庫で冷やすだけでかなり印象が変わります。外出先ではマイボトルに「宮の泉」で補充すれば水代0円
- マンション住まいで不安な人…疑うのは水源より貯水槽。管理会社に清掃の実施状況を確認するのが先です
- お湯も冷水もすぐ使いたい人…水質ではなく「ラクさ」で選ぶ話になります。浄水型サーバーの月額と欠点を先に確認してから決めてください
宇都宮の水道水って、「おいしい」って言ってるだけじゃなくて、餃子の皮で実験までして確かめてるんだよね。ここまでやってる街はなかなか無いよ。まずは冷蔵庫で冷やすところから試してみてね!
水道水を「安全だから飲めます」と説明する自治体は、たくさんあります。
でも、市民の「なぜ?」に実験で答えにいった自治体は、そう多くありません。
宇都宮の蛇口から出ている水は、そういう街の水です。
今日いちど、コップ1杯そのまま飲んでみてください。
それでも「冷水も温水も、毎日すぐ使えるほうがラク」と思った人は、こちらで実費を確認してから決めてください。